
再放送で視聴
(2011年2月8日BSハイビジョン)
どしたの?
よかった
この人たちにちゃんと言って
私は一万円出したのよ
なのに五千円と勘違いして
お釣りをくれない
息子さん、、だよね
は、はい。
あっお母さんにね
お話 事務所の方でって
他のお客さんもおるもんで
何度も繰り返されて来た僕達の日常だった
母のその手はいつも喋っていた
それを音にするのが
僕の仕事だった
幼い頃からの僕の
母の仕事は
ゴマフグの卵巣の毒抜きだ
卵巣の毒はフグの毒の中でも一番強い
卵巣を塩に一年漬け
それから糠に2年漬け
毎日漁礁をかけてやりながら
3年掛けて毒を抜いて行く
僕が幼い頃に父は死に
母は親戚がやっていた工場で働き
僕を育てて来た
もう時間だから
急いで食べて
玲子が手で伝えて来る
明人は声と手で
役所から通訳の人が来るんじゃないの?
断りました
前の人下手だったし
都合よく通訳されたら
たまらないもの
ないって
そんな騙すような事しないって!
向こうはすぐにでも
ここを壊したいんだから
建 て 替 え
明人は半ば呆れ顔で
空っぽの茶碗を片付けようと
立ちかけるが
ごちそうさまは?
玲子は手で求めた。
御馳走様でした。
明人は声に出して言った。
音の無い世界で生きる玲子
音のある世界で生きる明人
全編通して流れるピアノ音と共に
玲子の手で語る言葉から
受ける明人の手と声音から
日常の親子のたわいないやり取りに
様々な感情、、心の声が
手の振り、動き、指先、唇の動き
そして瞳
全てで発せられ
時に愉快に
時に哀しく響き
二人の姿に見入ってしまい
画面から滲み出るような
優しさと悲しさに胸がギュっとした

また
明人といずみとの出会い
私たちにはできないことが三つある
聞くこと
しゃべること
無限の夢を持つこと
でも
私たちにはできることも三つある
目で聞くこと
手でしゃべること
現実の中に夢を見つけること
思いは必ず
心の糸になってつながる
頑張れ後輩たち
玲子の書いた言葉は
いずみの希望だった。
玲子といずみの会話に音は無い
玲子は明人の居る場所は
触れられない世界だと言う。
いずみは玲子から拒絶された。
私にも聞こえる子が生まれたらそうなるのかな
いずみの悲しさ、、不安
そして戸惑い
いずみの手と瞳が泣いていた
心が揺さぶられ泣けた。。

いずみにしろ
玲子、明人を演じた三人

あのMatherkの松雪さんは
いつもながらだけど
画面一杯に伝わって来る
しっとりとした潤いの中に
切なさ一杯のオーラがあって
天才子役と言われた神木君は
今も順調な成長の中
非凡ぶりを発揮してると思う。
ピアノの演奏も自身だとの事(びっくりだよ!)
美月ちゃんは
影がある中に見せる笑顔の輝き
(明人の子役時代の加部亜門君も可愛かった)
三人共
お見事でした


脚本も短い時間ながら
良く纏めたと思う。
玲子がフグを洗う水
道を歩いてる時
いずみとの音が無い中でのやり取り
逆に
明人は電気のスイッチをon、offにして
玲子に気付かせたり
玲子がワザと音を立て
明人を呼ぶ、など
二人の身になって見せてくれた。
玲子、明人、いずみ
本当はもっともっと孤独かもしれない


でも
いずみの家族にしろ
善良なサラリーマンになるんだ
小さな幸せ噛みしめるような
めっちゃいい奴
やくざの息子・翔太のような友
(出番が少ないながら
染谷将太君も存在が光ってた)
丸橋のような理解者
彼等達と
支え合い、教え合い、力を分け合い
皆 それぞれ逃れられない宿命を抱えながら
自身の勇気で立ち上がって行く。
玲子が明人の為に
編んでいたピアノのカバー
伝える心を紡ぐように
一度もつれてもまた紡いでいける
明人の成長は親離れでもあり
必死だった母を解放する事でもあり
それでも心の糸は切れる事は無い
そんな風に感じたラスト部分
(二人のやり取りを拾える限り書き出しました)
もういいでしょ、ピアノ
死んじゃったじゃない
母さんが復讐する相手
この子を音のある世界で
こんなに立派に育ててみせました
それがピアノだったんでしょ
だからもういいでしょ
そうね
だって本当に悔しかった
哀しくて悔しくて
情けなくて
でも
あなたがいるから頑張れた
お父さんはね
みんなが私から
あなたを奪おうとした
だから
ちゃんと育てないと
あなたを連れて行かれるって
必死だった
ピアノを弾くあなたは
お母さんの誇りだった
お母さんと違ってあなたには
限りない可能性があった
あなたが私に力をくれた
あなたの夢を叶えるっていう
大きな夢をくれた
あなたは私の すべて だった
もういいですか
もう僕はそこから逃げてもいいですか
母さんのピアノから
逃げてもいいですか
逃げなさい
捨てなさい お母さんを
涙する玲子はいいのよ、と言わんばかりに
頷きながら笑みを浮かべ、、
淋しそうではあった
赤い目から涙する明人は
震える唇をかみしめ
じっと堪えていた。
明人はいずみに呼び出され
本当にピアノ
やめたの?
うん
ピアノが嫌いになったの?
よくわからない
見せたいものがあるんだけど
屋上にあった古いロッカーに
いずみが明人に言った言葉が書いてあった。
あの言葉を書いたのは母だった
明人は幼い頃の自分と
母とのやり取りを思い出した。
ピアノ、、好き?
うん好き!
大好き?
大~好き!
明人のピアノからね
お母さんの所まで
音がずぅーと糸みたいに繋がって
ちゃんと聞こえる
明人はあの時の母を思い出した。
永倉玲子と書かれた文字を
指で触れてみる
迷った時は
糸をたぐり寄せてみればいい
いずみが明人に伝える
行かなけゃ
そう手で告げる明人に
いずみは微笑んで頷いた
ピアノは運ばれてしまった
玲子が家のドアを開けた時
自転車に乗った明人が通り過ぎた
玲子はピアノが無くなった床を拭く
気が付いた時には
もう遅い事は沢山ある
明人はピアノが乗った車を追う
自転車を必死に扱ぐ
ピアノ
そう 僕のピアノから母の手
母の手から僕へ
明人は海沿いの道を必死に追った
ピアノから流れ出る
何千本 何万本の糸が見える気がした
自転車を扱ぐのを止めて
明人は空に手をかざした
その手に糸を掴むように
明人は玲子の仕事を見ていた
フグの毒って
どこに消えていくの?
フグはね もともと
毒があるわけじゃないの
生きてるうちにため込むの
卵巣とか内臓とかに
人も同じかも
私もあなたも
何年かければ抜けるのかしらね
抜けなくてもいんじゃない別に
笑顔の明人に玲子は微笑んだ
東京に行こうと思う
東京で働いて買いたいものがあるんだ
何?
買ったら見せるよ
そう
唇が答えた
玲子は背中を向け
再び作業を始めた
本当の僕のピアノ
明人は声に出した
玲子は背中を向けたままだった、、が
明人は風が運んできた糸を感じた
玲子もその糸に引き寄せられるように
明人に続いて
空を見上げた
そして
新しい糸が僕達の周りを廻り始める
(明人の心の中の声)
互いに青い空を見ていた明人と玲子は
顔を見合わせた。
作・龍居由佳里
音楽・千住明
永倉玲子・・・松雪泰子
永倉明人・・・神木隆之介
永倉明人(子役)・・・加部亜門君
大貫いずみ・・・谷村美月
都築翔太・・・染谷将太
大貫和美・・・中島ひろこ
宮越圭子・・・山下容莉枝
都築克己・・・井坂俊哉
店長・・・伊沢勉
遠藤・・・多田木亮佑
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